弁護士法人杜協同 阿部・佐藤法律事務所

HOME > 法律問題Q&A > 震災法律相談Q&A

震災法律相談Q&A

原発事故による風評被害(2)-敦賀原発事件-

A:最初の事件は敦賀原発風評被害事件です。
昭和56年に福井県の敦賀原発からコバルト60を含む放射性物質が、敦賀湾へ漏出する事故が発生し、事故が通商産業省から公表されました。
マスコミで連日のように報道された結果、集荷自粛を行う県外市場が続出し、敦賀湾の魚介類の価格の暴落・取引量の低迷が続いたことから訴訟になりました。
名古屋高裁金沢支部平成元年5月17日判決が出されています。

A:上記訴訟で直接的な対象とされたのは、実は石川県の金沢産の魚介類だったのですが、判決は敦賀湾のものについても考え方を示しています。
放射能汚染については、敦賀湾でとれた魚介類にはほとんど影響はなく、敦賀湾から遠く離れた金沢産の魚介類は無影響だったと認定しています。

A:判決は敦賀湾産の魚介類について次のように述べています。
「本件事故の発生とその公表及び報道を契機として,敦賀産の魚介類の価格が暴落し,取引量の低迷する現象が生じたものであるところ,敦賀湾内の浦底湾に放射能漏れが生じた場合,漏出量が数値的には安全でその旨公的発表がなされても,消費者が危険性を懸念し,敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理は,一般に是認でき,したがって,それによる敦賀湾周辺の魚介類の売上減少による関係業者の損害は,一定限度で事故と相当因果関係ある損害というべきである。」

A:金沢産については次のように述べています。
「事故による影響かどうか必ずしも明らかではないものの,一部売上減少が生じたことが窺われるが,敦賀における消費者が,敦賀湾から遠く離れ,放射能汚染が全く
考えられない金沢産の魚まで敬遠し,更にはもっと遠隔の物も食べたくないということになると,かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認めがたい。金沢産の魚も心情的には不安であるとの理由で賠償を命ずるものとすれば,金沢における消費の低下も是認しなければならなくなり,損害範囲はいたずらに拡大することとなる。」

A:風評被害のもとになる消費者心理に理解を示しながらも、損害賠償の範囲をいたずらに拡大させるのは相当でないとして、極めて主観的な心理状態による買い控えとの間にまで相当因果関係があるとはいえないという立場を示したものです。

A:原子力損害賠償紛争審査会の第二次指針には賠償の対象として農水産物や観光の風評被害が含まれることになりました。
その議論の過程において、名古屋高裁金沢支部平成元年5月17日判決における消費者心理の考え方が大きな参考とされたようです

原子力の問題

ページのトップへ戻る