震災法律相談Q&A

行政との関係

義援金の配分

A:今回の震災に対しては、全国から多くの義援金が寄せられました。
しかしながら、
①被災地の被害が余りにも大きくて、実態の正確な把握が遅れていること、
②義援金の配分手続に複数の段階があることが遅れている主な原因だと考えられます。

A:義援金の代表的なものとして、日本赤十字社、中央共同募金会、NHKなどの義援金受付団体に寄せられたものがあります。
4月6日時点で1283億円が集められており、配分割合決定委員会において配分割合が次のように決められました。
・死亡・行方不明者35万円
・住宅全壊・全焼世帯35万円
・住宅半壊・半焼世帯18万円
・原発避難・屋内避難指示世帯 35万円
この金額は実は被災者に直接渡されるのではなく、上記の配分割合によって算定された上で被災した15都道県に配分されます。
そして各都道県にも義援金配分委員会が設置されており、地域の被害状況に応じて配分を決めることになっています。
そしてそこで決められた金額も直接被災者にではなく、市町村を通じて被災者に交付されることになっているのです。
義援金受付団体、都道府県、市町村という3つの主体が関わって段階的に配分手続が行われているのです。

A:上記の義援金受付団体からの第1次配分が156億1168万円と試算されましたので、これを前項の基準に従って配分することになりました。
5万円から10万円の上乗せも検討されたのですが、被害の全容を把握してから再検討することになりました。
スケジュールとしては4月20日に市町村に送金され、現在市町村で交付の準備を行っているところだそうです。

A:宮城県災害対策本部が受け付けていた義援金も4月8日時点で72億4888万円になっています。
これについては今後の被害状況の判明に応じて第2次配分の対象とされることになっています。
またこれらの他に市町村に対する独自の義援金もあり、これも地域の被害状況に応じた形で配分されることになります。

災害弔慰金が支給される場合

A:災害弔慰金は「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、市町村が条例を定めて、地震や津波、豪雨などの自然災害で死亡した人の遺族に支給されます。
支給金額は、災害によって生計の柱だった人が死亡した場合には500万円、その他の場合には250万円となっています。
支給の対象となるのは、配偶者、子、父母という順番になっており、相続とは違っています。

A:市町村の被害状況によっていつから申請ができるかが違っているようです。
例えば仙台市では4月中に申請の受付を開始しましたが、沿岸部では5月の下旬から受け付けるというところもあります。
自治体に問い合わせしてみて下さい。
申請から現実の支給までは概ね2ヶ月間くらいかかると言われています。

A:津波にのみ込まれて亡くなった場合の直接死に対して、震災後の体調の悪化が原因で亡くなった場合は「災害関連死」と呼ばれています。
災害弔慰金の支給等に関する法律に規定されている「災害によって死亡した」と言えるか否か、すなわち震災と死亡との因果関係が認められることが支給要件になります。

A:そのとおりです。
当時神戸市でも災害関連死として問題となったケースが1200件以上もあり、そのうち因果関係が認められたのは約半分にとどまったそうです。
判断に迷うケースは医師や弁護士から構成される審査会で決定されることになるのですが、震災後ですので、判断の基礎となる資料が必ずしも十分でないという場合も多かったようです。

A:災害弔慰金の支給等に関する法律は自然災害の場合を想定しています。原発事故は自然災害ではないという見解もあるようですが、原発事故自体が地震・津波によるものであることは明らかですので、自然災害に起因すると考えるべきです。
もっともこの場合にも災害関連死ですので、震災と死亡との因果関係が認められることが支給要件になります。

子どもに対する支援

A:各都道府県の教育委員会が担当課です。
震災後は、避難所等にスクールカウンセラーが派遣されています。
また、これとは別に教育委員会又は教育事務所に申込みをして、カウンセラーを派遣してもらうこともできるようです。
詳しくは、各教育委員会に問い合わせてみてください。

A:心的外傷後ストレス障害(PTSD)という病気の可能性があります。
将来を考えると大きな病院の精神・神経科で診てもらうことをお勧めします。

A:災害救助法23条1項8号は、被災者に対する救助内容として学用品の給与を規定しています。
阪神淡路大震災では、被災児童に対して教科書の無償給与が実施されました。
東日本大震災では、子どもの学び支援ポータルサイト(http://manabishien.mext.go.jp/)が設けられ、
各自治体や教育委員会が全国の他の自治体や団体に対して支援を求められるようになりました(団体のみの登録であり、個人は登録できません)。
今後は、被災地の各自治体や教育委員会を通して、1人ひとりの子どもたちに支援がなされていくと思われます。

被災市街地の建築制限

A:建築基準法84条は市街地に災害のあった場合に、区域を指定して最大2ヶ月間その区域内の建築物の建築を制限または禁止することができると定めています。
復旧・復興にあたっては「新しいまち作り」という観点が必要であり、無秩序な建物の建築を防止しようというものです。

A:宮城県内では、宮城県、仙台市、石巻市が建築基準法84条の制限の権限を有しています。
宮城県は津波により建築物が大規模に流失した沿岸部に位置する気仙沼市、名取市、東松島市、女川町、南三陸町の3市2町に対して、区域を指定して、5月11日まで建築制限を告示しました。石巻市も区域を指定して同様に5月11日まで建築制限を告示しました。
仙台市でも今後同様の措置が取られる可能性があります(4月17日現在)。

A:現在の建築基準法ではそうなのですが、今回のような極めて大規模な市街地の壊滅からすると、2ヶ月で計画的なまち作りの方針を策定するのは難しいと思われます。
そこで政府は建築制限を最大8ヶ月まで延長できるように法律改正することを決めました。
直ぐに建て直したいというお気持ちは良く解りますが、新しいまち作りのために協力して下さい。

被災建築物応急危険度判定制度

A:被災建築物応急危険度判定というものです。
市町村の災害対策本部が、専門家を派遣して被災した建物が地震後に余震などによって倒壊する危険性、タイルや外壁が落下する危険性等を判定して、二次災害を防止するための制度です。
応急的な判定ですので、外観を目視して行うのが一般的です。

A:判定の結果は3段階に分かれます。
結果に従って次のようなステッカーを玄関等の見やすい位置に貼ることになっています。
・ 調査済・・・・・・緑色のステッカー
・ 要注意・・・・・・黄色のステッカー
・ 危険・・・・・・・赤色のステッカー
仙台市では震災後、3月31日までに約7200件の判定を実施しており、そのうち約1000件が危険、約1900件が要注意と判定されたようです。

A:判定に強制力はありませんが、そのまま使用するのは危険です。
使用を中止して、一時避難所に避難するか、引き続き使用したい場合には、建築の専門家に早急に依頼して、どのような補修・補強をすれば使用できるのかを調査してもらうことが必要です。

A:「借家の滅失」というテーマでも触れましたが、建物が滅失したというためには、建物の損傷の程度、修繕に要する費用の両面から検討することが必要です。
今回ご相談の判定はあくまでも応急的に危険としたもので、その建物が滅失したと判断できるか否かは、もっと深く踏み込んだ調査が必要です。
まずは当事者間で良く話をした上で、建築の専門家に相談してみては如何でしょうか。

住宅の応急修理制度について

A:災害救助法23条8号に規定している「住宅の応急修理制度」を使えるかもしれません。
この制度は被災者が住み慣れた場所での暮らしを維持することを可能とすると同時に、限りある仮設住宅を有効に利用する目的で作られた制度で、自治体が応急修理の費用を負担してくれます。

A:災害救助法が適用された市町村において、次のような要件を満たせば制度使用ができます。
・災害により、住宅が半壊・半焼した場合(罹災証明書が必要です)
・仮設住宅に入居していない方
・自ら修理する資力のない世帯

A:基本的に世帯全体の年収と世帯主の年齢によって対象が決められます。
例えば世帯全体の年収が500万円以下であれば、問題なく該当しますが、700万円を超える場合には世帯主が60歳以上の場合に限られます。

A:この制度は日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理するもので、より緊急を要する箇所について実施します。
屋根・柱・床・外壁・基礎といった部分が最優先で、台所やトイレも対象になりますが、クロスのような内装は原則対象外です。

A:1世帯あたりの限度額が52万円となっています。まずはお住まいの市町村に応急修理の申込みを行い、その上で業者に見積相談します。
業者に発注するのは市町村であり、修理費は市町村から直接業者に支払われます。

A:制度の趣旨からして、応急的なものであることは必要ですが、例えば70万円の修理費を要する修理も全くできないわけではなく、その場合52万円を超える部分は申込者の負担となります。

行き場所のないペット

A:今回のような未曾有の大災害の中では、ペットより人を救うのが先ではないかという考え方があるのはやむを得ないところです。
しかしながら、ペットを「家族の一員」と思って暮らしている方はたくさんいらっしゃいます。
ペットを守るために周りの方の理解を得ようと多くの方が頑張っています。
その結果、自治体によっては避難所にペットと一緒にいられるスペースを確保する動きも見られるようになりました。
新聞等でもペットと一緒に避難所生活を送る姿が紹介されています。

A:例えば、仙台市では市の動物管理センターと獣医師会及びボランティア団体と提携して「動物救護対策臨時本部」を立ち上げました。動物愛護法の精神を具体化したものです。

A:様々な対活動を行っています。透析の間の一時預かりも対応してもらえます。
次に対策臨時本部が予定している活動を紹介しましょう。
・ ペットの具合が悪ければ、診察の可能な動物病院の情報を提供しています。
・ 被災した飼い主不明のペットを動物病院で無償で預かり、診察しています。
・ ペットと同行避難している避難所にペットフードやシーツなどの支援物資を配付しています。
・ 被災して飼い主とはぐれたペットをホームページで情報提供しています。
・ 飼い主の見つからないペットの新しい飼い主を探しています。

A:核家族化が進む中で、ペットの持つ重要性が社会的にも認められてきた結果でしょう。
但し、ペットを含めた場合、限られた資源を分け合うことになりますし、人によっては様々な感覚があることも事実ですので、周りの人とお互いに理解し合っていけるための努力が必要ですね。

避難先・移転先での介護保険利用

A:保険証などを家屋に残したまま避難した方が多いことから、厚生労働省は各自治体に対して、それらの書類が無くても、氏名・住所・生年月日を申し出ればこれまでと同じ内容のサービスを受けられるように通知しました。
書類が無くても大丈夫です。

A:介護保険の利用は基本的に住民票が基準になります。
従って、別の自治体に移転したとしても住民票を移さなければ、今までどおりの自治体の介護保険を利用してサービスが受けられます。

A:総務省が、各自治体に対して、そうした場合には転入先の自治体に氏名・住所・生年月日等を届ければ、住基ネットワークの保有情報を活用して転入できるように通知しています。住民票は移すことができます。

A:先ほどお話ししたとおり、介護保険の利用は住民票が基準になりますので、転入先の自治体の介護保険を利用することになります。
しかしながら、その場合にあらためて介護度の認定をしてもらうのでは大変な負担ですので、厚生労働省は従来の自治体と連絡を取り合ったり、被保険者から聞き取りをすることで認定が行えるように通知しています。
こうして認定されれば、従来のサービスを受けることができますね。

津波で放置された自動車

A:津波で流されたまま放置された自動車は復興活動の大きな妨げになっています。
各自治体では次々にこのような場合の取り扱いを広報しています。
災害対策基本法64条に基づいて、自動車の所有者に代わって、自治体が撤去し、一時保管するという内容になっています。

A:先ほどの災害対策基本法64条による撤去は公有地、私有地の別にかかわらず行えると定められています。
但し、災害復興の目的ですので、道路上が最優先になるという方針のようです。
道路・公園・水路等からの撤去が終了してから私有地に取りかかることになると思われます。

A:撤去した自動車は自治体で一時保管します。
そうした上で、ホームページ、市役所、避難所などに車両番号や保管場所を公示します。
公示後6ヶ月が経過しても引き取りがない場合には自治体が処分することになります。

A:自治体でも委託業者に依頼しておりますので、費用は自動車の所有者負担となります。
引き取りをする場合でも、使えなくなって廃車にする場合でも同様で、1万5000円程度のようです。

A:撤去は行政に特有の権限ですので、私人が勝手にはできないのが原則です。
しかしながら、復興にどうしても必要な措置であり、車も損傷が酷くて使い物にならないような場合には、道路に押し出すということもやむを得ないと思います。

罹災証明書について

A:罹災証明書は火事や災害で家屋が被害を受けた場合に被害状況を自治体が具体的に確認した上で発行する書類です。

A:地震で損壊したり津波で流失した場合は市町村が発行者ですが、火災による焼失の場合は消防署長が発行することになります。

A:被災者生活再建支援法に基づく支援金、災害弔慰金法に基づく災害弔慰金・災害障害見舞金、税金の減免、公営住宅入居の優遇措置、住宅購入や事業資金のための融資、各種保険金の申請等に必要になります。

A:原本を示すことは求められることがありますが、各種申請に添付する場合にはコピーで足ります。原本は大切に保管して下さい。

罹災証明書(その2)

A:確かに、罹災証明を行うには、原則として現地調査が必要ですので、申請してもすぐに罹災証明書は交付されません。
そこで調査の前には届出証明書を発行しているのです。

A:罹災証明書は固定資産税課で担当されることが多いようですね。
それもあって固定資産税が賦課されていない建物については慎重な取り扱いがなされることがあると聞いています。
しかしながら、罹災証明書は建物が被災した際の各種支援を受ける場合の書類ですので、基本的に固定資産税の賦課とは直接リンクしないように思います。
資材置き場の壊れた写真や購入時の契約書等を持参して、市役所と十分に協議してみて下さい。

A:多くの建物が被害に遭いましたので、現地調査には時間がかかるかもしれません。
しかしながら危険な建物は早急に修繕しないわけにはいきません。
その場合には、修繕前に被害状況が判るような写真を沢山撮影しておくことが必要です。
また、修繕費用の明細書付の領収書も大切に保管しておいて下さい。

罹災証明書(その3)

A:全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4段階に分かれます。
このどの段階に該当するかによって支援金額が違ってきますので、証明書の判定は経済的にも大きな意味を持ちます。

A:今回の津波で壊滅的な被害を受けた市町村では、申請を受けてから調査をするのではなく、航空写真の分析等で罹災状況が把握できることから、地域内の建物を一括して「全壊」とする罹災証明書を発行することにしたようです。
もっとも各自治体によって様々な条件が違っていますので、必ず自治体に問い合わせして下さい。

A:家屋が流出したり、1階天井まで浸水した地域は全て「全壊」と判定することにしたようです。

A:被災者生活再建支援法によれば、生活再建費用と住宅安定費用を合わせて、「全壊」の場合最高300万円が支給されることになります。

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