家族・相続の問題
相続放棄の申出期限の延長
A:相続放棄をすることで、借金の支払を免れることが考えられます。
具体的には、親族の死亡などで自己のために相続開始があったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に相続の放棄をする旨の申し出をすることになります(民法915条1項本文、938条)
A:ご安心ください。平成23年6月17日に成立した「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」により、東日本大震災で親族を亡くした被災者については、相続放棄の申し出の期限が同年11月30日まで延長されることとなりました。
あなたのように震災から3か月の6月11日にすでに期限を迎えた人も、さかのぼって上記法律が適用されるので、11月30日までであれば相続放棄ができます。
A:いいえ、適用されません。
上記Aにおける「被災者」とは、東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村の区域(東京都の区域を除く。)に同日において住所を有していた者をいうからです。
災害救助法の適用市町村については、厚労省の下記HPなどでご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014j2y.html
A:はい、延長されます。
平成22年12月11日以降に亡くなった方については、上記法律が適用されるからです。
震災時が「被災者」にとって、相続放棄の判断期間中であったことに対する配慮がなされた結果の立法です。
失踪宣告と同時死亡の推定
A:津波による行方不明者について、生存している可能性が無い場合には、認定死亡と失踪宣告という2つの制度があることを以前説明しました。
A:たしかに現実には認定死亡は利用されていないようです。
認定死亡は警察署長などが、死亡地の市町村長へ死亡報告をし、本人の戸籍簿に死亡の記載を行う制度です(戸籍法89条)が、津波による行方不明者の数があまりにも多いことと、遺族の請求によらずに死亡の推定をすることを避けようという行政側の判断によるものと考えられます。
A:今回の場合は、津波による危難が去った後、生死が1年間明らかでないときに、あなたが、家庭裁判所に対して失踪宣告を申し立てることになります(民法30条2項)。
失踪宣告が確定すると、お父様は津波の危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法31条)。
A:前項で失踪宣告の効果として、津波の危難が去ったときに死亡したものとみなされるとお話ししました。
したがって、ご主人は現実に死亡が確認され、お父さんは失踪宣告による死亡とみなされるというような違いはありますが、いずれも津波によるものであり、同じ部屋にいたのですからお二人は同時に死亡したと推定されることになると考えられます(民法32条の2)。
このような同時死亡の場合にも、いわゆる代襲相続が認められますので、ご主人の代わりにお孫さんにあたるあなたの息子さんが相続することになります(民法887条2項)。
子どもに対する支援
A:各都道府県の教育委員会が担当課です。
震災後は、避難所等にスクールカウンセラーが派遣されています。
また、これとは別に教育委員会又は教育事務所に申込みをして、カウンセラーを派遣してもらうこともできるようです。
詳しくは、各教育委員会に問い合わせてみてください。
A:心的外傷後ストレス障害(PTSD)という病気の可能性があります。
将来を考えると大きな病院の精神・神経科で診てもらうことをお勧めします。
A:災害救助法23条1項8号は、被災者に対する救助内容として学用品の給与を規定しています。
阪神淡路大震災では、被災児童に対して教科書の無償給与が実施されました。
東日本大震災では、子どもの学び支援ポータルサイト(http://manabishien.mext.go.jp/)が設けられ、
各自治体や教育委員会が全国の他の自治体や団体に対して支援を求められるようになりました(団体のみの登録であり、個人は登録できません)。
今後は、被災地の各自治体や教育委員会を通して、1人ひとりの子どもたちに支援がなされていくと思われます。
行方不明者との婚姻関係
A:行方不明であってもそれだけでは直ちに婚姻関係には影響しません。
但し、死亡が現実に確認された場合、認定死亡や失踪宣告がなされた場合にはご主人が死亡したことになりますので、婚姻関係も終了します。
A:お気持ちは大変良く解ります、ご遺体として見つかったわけでもありませんからね。
A:官公署が勝手に行うことはないようです。
災害による死亡認定は、親族などからの死亡認定の願出があること、災害発生から3ケ月以上経過していること、などの要件を具備する必要があるとされているからです。
A:配偶者の生死が3年以上明らかでないときは、離婚原因となります(民法770条1項3号)。
この場合には調停を経ずに、家庭裁判所に対して、行方不明者である夫を被告とする離婚の訴えを提起することとなります。
もっとも、離婚する場合には相続は生じなくなりますし、親族との関係も難しいものがありますので、慎重に行動するように伝えて下さい。
同時死亡した場合の相続関係
A:数人の死亡者のうち誰が先に死亡したのかが分からないときには、同時に死亡したものと推定されます(民法32条の2)。
そして、同時に死亡した人の間では相続関係は生じないのです。
したがって、ご主人は義理のお父様の財産を相続しないことになります。
A:代襲相続という制度により、お子様は義理のお父様の財産を亡くなったご主人に代わって相続することができます(民法887条2項)。
A:同時死亡の推定を受ける者同士においては、遺言の効力は生じません(民法994条1項)。
したがって、遺言書があっても、それが無かった場合と同様の結果となります。
A:同時に死亡した者の間では相続関係が生じない以上、ご夫婦間で相互に相続されることはありません。
それぞれの財産は、それぞれのご両親やご兄弟などに相続されることになります。
親が行方不明の場合の相続関係
A:行方不明だからといって、直ちに相続が開始することはありません。
認定死亡または失踪宣告がなされることが必要です。
A:震災や津波などの災害で死亡が確実なのに死亡が確認できない場合(遺体が確認されない場合が典型です)に、取り調べをした官公署(警察署長など)が死亡地の市町村長へ死亡報告をし、本人の戸籍簿に死亡の記載を行う制度です(戸籍法89条)。
戸籍記載の日に死亡したものとして相続が開始します。
今回の津波による行方不明の場合は、認定死亡がなされる可能性が高いと思われます。
A:生死不明の者を民法上死亡したものとして扱う制度です。
今回の場合は、津波による危難が去った後、生死が1年間明らかでないときに、行方不明者の身分上・財産上の利害関係人が、不在者の住所地の家庭裁判所に失踪宣告の審判を申し立てることになります(民法30条2項)。
失踪宣告審判が確定すると、津波の危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法31条)。
その結果、お父様の財産につき、相続が開始します。
A:是非生きていて欲しいですね。行方不明者が生存していることが判明すれば、認定死亡の効力は失われ、戸籍の訂正が行われます。
A:行方不明者が実は生存していることを知らないで行った行為については例外的に有効とする考え方と、当然に無効となるという考え方とがあります。
学説上は前者の考えが有力と考えられていますが、この点については、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
A:こちらは、当然には失踪宣告の効果は失われません。
本人または利害関係人の請求により家庭裁判所が取消しの審判を行い、失踪宣告を取り消すことが必要です(民法32条1項前段)。
あなたは利害関係人に当たりますので、取消しの審判を申し立てられます。
A:一般には、売主と買主の方の双方がお父様の生存を知らないで売却がなされた場合には、売却行為は有効と考えられています(民法32条1項後段)。
従兄弟が行方不明の場合の財産管理
A:従兄弟の方が未成年者で法定代理人(親権者など)がいる場合、あるいは、成年者でも前もって自ら財産管理人(任意後見人など)を定めていた場合には、その方が財産管理をします。
A:従兄弟の方の推定相続人・債権者あるいは担保権者等の利害関係人や検察官が、家庭裁判所に財産管理人の選任の申立てを行い、選任された財産管理人が財産管理をします(民法25条1項)。
いわゆる不在者の財産管理人と呼ばれる制度です。
A:財産管理人は、原則として管理行為、すなわち、保存行為や目的物または権利の性質を変えない範囲内の利用又は改良を目的とする行為のみができます(民法28条・103条)。
本件における行為は、保存行為に当たるといえるので、ガラスを買って据え付けることはできます。
A:管理行為には当たらないので、当然にはできません。
もっとも、裁判所の許可があれば、管理行為以外の行為も行えます(民法28条)。
したがって、裁判所の許可を得てから売却して下さい
行き場所のないペット
A:今回のような未曾有の大災害の中では、ペットより人を救うのが先ではないかという考え方があるのはやむを得ないところです。
しかしながら、ペットを「家族の一員」と思って暮らしている方はたくさんいらっしゃいます。
ペットを守るために周りの方の理解を得ようと多くの方が頑張っています。
その結果、自治体によっては避難所にペットと一緒にいられるスペースを確保する動きも見られるようになりました。
新聞等でもペットと一緒に避難所生活を送る姿が紹介されています。
A:例えば、仙台市では市の動物管理センターと獣医師会及びボランティア団体と提携して「動物救護対策臨時本部」を立ち上げました。動物愛護法の精神を具体化したものです。
A:様々な対活動を行っています。透析の間の一時預かりも対応してもらえます。
次に対策臨時本部が予定している活動を紹介しましょう。
・ ペットの具合が悪ければ、診察の可能な動物病院の情報を提供しています。
・ 被災した飼い主不明のペットを動物病院で無償で預かり、診察しています。
・ ペットと同行避難している避難所にペットフードやシーツなどの支援物資を配付しています。
・ 被災して飼い主とはぐれたペットをホームページで情報提供しています。
・ 飼い主の見つからないペットの新しい飼い主を探しています。
A:核家族化が進む中で、ペットの持つ重要性が社会的にも認められてきた結果でしょう。
但し、ペットを含めた場合、限られた資源を分け合うことになりますし、人によっては様々な感覚があることも事実ですので、周りの人とお互いに理解し合っていけるための努力が必要ですね。
震災により両親を失った子どもの保護
A:厚生労働省の防災業務計画によれば、都道府県や市町村は、震災後保護者のいない児童の発見・把握につとめるものとされています。児童とは、満18歳に満たない者をいいます(児童福祉法4条1項)から、小学生のAくんはこれにあたります。
避難所等でAくんのような児童を発見したときは、まずは避難所の責任者等を通じて、都道府県や市町村に通報するようにしてください。
A:厚生労働省の防災業務計画によれば、親族等に連絡して児童を受け入れる可能性があるかどうか探るほか、児童相談所が相談に応じます。
児童相談所が行う措置としては、一時保護、施設入所、里親への委託等が考えられます。
A:児童福祉法33条に規定されており、一時保護所において児童をあずかる措置をいいます。原則としては、2カ月程度の短い期間が予定されています。
A:児童福祉法27条1項3号に規定されており、児童養護施設等の児童福祉施設に児童を入所させる措置をいいます。
児童養護施設では、児童を養護し、自立に向けた支援を行います。児童養護施設に入所した児童は、その施設から学校に通うことになります(児童福祉法48条参照)。
A:児童福祉法34条の3以下に規定されており、児童を自分の家庭に受け入れ養育してくれる里親に児童を預ける制度をいいます。
里親に預けられた児童は、里親のもとから学校に通うことになります(児童福祉法48条参照)。
A:満20歳に満たない未成年者に親権を行う者がいないときには、未成年後見人を選任して、その者が未成年者の財産の管理を行う制度があります(民法838条)。
児童相談所長は、児童の福祉のため必要があるときは、家庭裁判所に対し未成年後見人の選任を請求しなければならないことが定められています(児童福祉法33条の8)ので、未成年者の財産管理について適切に対応できるよう法律上も配慮されています。