震災に関する特別法
原発による損害の賠償(2)-責任の集中-
A:「原子力損害の賠償に関する法律」4条に規定されている原子力事業者への責任集中は、文部科学省のホームページでは次のように説明されています。
「責任集中の原則とは、賠償責任を負う原子力事業者以外の者は一切の責任を負わないとするものです。これにより、被害者は容易に賠償責任の相手方を知り得、賠償を確保することができるようになります。
一方、この責任集中は、原子力事業者に機器等を提供している関連事業者を、被害者の賠償請求との関係において免責するものであり、これら関連事業者は安定的に資材を供給することが可能になり、これにより原子力事業の健全な発達に資することにもなります。
なお、多くの諸外国の原子力損害賠償制度においても、同様の制度が採用されています。」
A:法4条の趣旨は前項のとおりですので、いくら大手であっても責任の追及はできないことになります。
A:まさにそのような事態を回避するために、原子力事業者に対して、損害賠償措置として1200億円の原子力損害賠償責任保険契約が義務づけられているのです。もしも原子力事業者の賠償額が1200億円を超えてしまい、破綻してしまったような場合には政府が必要な援助を行うと定めています(法16条)。
A:この点については必ずしも十分に議論されていませんが、これまでの運用は福島第一原発全体を一事業所、一工場とみなすことを前提としていると思われます。
原発による損害の賠償(1)-無過失・無限責任-
A:「原子力損害の賠償に関する法律」がこの様な場合に適用される法律となります。
法律の概要を箇条書きにしてみました。
・ 原子力事業者に無過失責任を課す(3条)。責任の制限なし
・ 原子力事業者への責任の集中(4条)
・ 損害賠償措置を義務づけ(6条)-原子力損害賠償責任保険契約(8条)
・ 原子力事業者の責任が1200億円を超えた場合の国の援助(16条)
・ 原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介、一般的指針策定(18条)
A:基本的にはその通りです。
しかしながら同法3条1項但し書きは「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」と規定しています。
但し書が適用されて免責されるのは、隕石の落下や戦争などに限定されるというのが多数の意見のようです。
枝野官房長官も「安易に免責の措置が取られることは、この経緯と社会状況からあり得ない」という見解を示しています。
A:原子力事業者の責任はあくまでも無限責任です。
1200億円という数字は損害賠償措置としての原子力損害賠償責任保険の契約金額ですので、これに限定されることはありません。
A:文部科学省のホームページには次のような見解が表明されています。
「原賠法では、万一原子力損害が発生した場合、原子力事業者は生じた原子力損害の全額を賠償する義務を負っています(無限責任主義)。従って、1200億円を支払えばそれ以上は賠償請求に応じなくてもよいのではなくて、この1200億円は、万一原子力損害が発生した場合、被害者に対して迅速かつ確実に賠償の支払いを行うための保険に過ぎません。1200億円を超える損害額については、自らの財力をもって支払う義務が残ります。なお、事業者の財力等から見て必要があれば、国が必要な援助を行うことが可能となっており、被害者の保護に遺漏がないよう措置されています。」
A:この審査会は能見善久学習院大学法務研究科教授を会長とする10名の学識経験者からなるものですが、原子力損害賠償に関する一般的な指針を示すことが最も重要です。
平成23年4月28日には危険区域からの避難や農作物の出荷制限など、事故後の政府指示で発生した被害を賠償対象とする第1次案を発表しました。
第2次案では風評被害についても対象とすることが検討されているようです。
被災者を支援する法律
A:災害応急対策や災害復旧には様々な法律がありますが主なものとしては、
・災害対策基本法
・被災者生活再建支援法
・災害救助法
・激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)
・特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律
(権利保全特別措置法)
・災害弔慰金の支給等に関する法律
・災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律
・罹災都市借地借家臨時処理法(罹災都市法)
などがあります。何れの場合も、政令(内閣が出す行政上の命令)によって、災害指定、地域指定を受けることが必要です。
A:こうした方々は、被災者生活再建支援法により生活再建費用として100万円以内(物品購入費、医療費、交通費など)、住宅安定費用として200万円以内(家賃、解体撤去費用、住宅建設、購入、補修のための借入金利子など)の支援金を受けることができます。
但し、年収や、支給対象等による制限がありますので詳しくは市町村役場で確認して下さい。
A:災害救助法は、国は地方公共団体(市町村のこと)や日赤等と協力して、避難所や応急仮設住宅、炊き出し、飲料水、被服、生活必需品、医療、被災住宅の応急補修、生業資金の貸与、埋葬などが救助の内容とされています。
現在被災地で行われている避難所生活は大変だと思いますが、物流が改善されてきており、又多くのボランティアの方々の支援もあり、少しずつ良くなっている様です、困ったことは相談し合い、助け合い乍ら頑張っていきましょう。
A:政府は、被災地の復旧や復興を急ぐため、緊急の税制減費等を導入することにしています。
具体的には、2010年に納めた法人税・所得税の還付、固定資産税の非課税、寄付金控除の拡大等が検討されている様です。
また中小企業庁は、被災した中小企業への補助事業を全国商店街振興組合連合会と協議していると伝えられています。