不動産の問題
権利証を紛失した場合
A:権利証は登記が完了した際に法務局から買主などの登記権利者に交付される書類です。
正式には登記済証といい、新たな登記の申請をする場合に本人確認資料として必要となります。
不動産登記法の改正に伴い、現在は登記識別情報という数字等による符号が交付される扱いに変わっています。
A:権利証をなくしても不動産の権利を失うということはありませんので安心して下さい。
再発行は制度上できないのですが、登記を依頼された司法書士が「本人確認情報」を作成してその不動産の所有者であることを確認する書類が事実上権利証の代わりとなります。
それによって新たな登記をすることができます。また事前通知制度といって、登記の申請があった場合に法務局が権利証の代わりに本人の意思確認を行うという制度もあります。
なお家を津波で流失してしまった場合には、滅失登記を行うことが必要なのですが、今回の震災の被害の大きさから法務省は所有者に負担をかけずに職権で滅失登記を行う方針であると伝えられています。
A:市役所に行って、印鑑と印鑑証明書の紛失届を提出した上で、新規の登録手続を行えば新しい実印の印鑑証明書を取ることができます。
前項の本人確認情報と新しい実印・印鑑証明書で新たな登記をすることができます。
被災市街地の建築制限
A:建築基準法84条は市街地に災害のあった場合に、区域を指定して最大2ヶ月間その区域内の建築物の建築を制限または禁止することができると定めています。
復旧・復興にあたっては「新しいまち作り」という観点が必要であり、無秩序な建物の建築を防止しようというものです。
A:宮城県内では、宮城県、仙台市、石巻市が建築基準法84条の制限の権限を有しています。
宮城県は津波により建築物が大規模に流失した沿岸部に位置する気仙沼市、名取市、東松島市、女川町、南三陸町の3市2町に対して、区域を指定して、5月11日まで建築制限を告示しました。石巻市も区域を指定して同様に5月11日まで建築制限を告示しました。
仙台市でも今後同様の措置が取られる可能性があります(4月17日現在)。
A:現在の建築基準法ではそうなのですが、今回のような極めて大規模な市街地の壊滅からすると、2ヶ月で計画的なまち作りの方針を策定するのは難しいと思われます。
そこで政府は建築制限を最大8ヶ月まで延長できるように法律改正することを決めました。
直ぐに建て直したいというお気持ちは良く解りますが、新しいまち作りのために協力して下さい。
マンションの建替え
A:区分所有者の頭数と議決権(専有部分の床面積によって決まります)の各5分の4以上の多数決があれば、建替えができます(建物の区分所有に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)62条1項)。
なお、決議の内容や決議に至るまでの手続については、区分所有法に細かい定めがなされています。
A:マンションの建替えに賛成した区分所有者等は、反対者に対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができます(区分所有法63条4項)。
A:自主再建方式、全部譲渡方式のほか、マンション建替法に基づく手続によることが考えられます。
A:建替え参加者(決議に賛成した区分所有者など)が主体となって、建設会社等と契約し、被災マンションを取り壊し、新しいマンションを建てるという方法です。
A:デベロッパー(開発・分譲業者)が、建替え参加者の持っている区分所有権、敷地措雄健をいったんすべて譲り受け、建物を取り壊して新たにマンションを建設し、改めて建替え参加者に新築マンションを分譲するというものです。
A:建替え決議後に設立されるマンション建替組合が作成した権利変換計画案に基づいて権利変換が行われるというものです。
ここでの権利変換とは、従前のマンションに関する区分所有権などの権利を、新しく建てられるマンションに関する権利に置き換えることをいいます。
市街地開発事業においてよく用いられるものです。
A:抵当権者や賃借人の同意がないと建物の取り壊しはできません。
ただし、マンション建替法による建替えの場合には権利変換により抵当権・借家権を新たに建てたマンションに移行することができます。
A:民法の原則に従えば、土地の共有者全員の同意がなければ建物の再建はできません(民法251条)。
もっとも、政令が指定する大規模な災害の場合には、敷地所有者等の議決権の5分の4以上の賛成があれば、建物の再建を行うことができます(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法2条1項、3条1項)。
今回の震災の場合は、政令によって大規模な災害と指定される可能性が高いと思われます。
マンションの復旧
A:まず、マンションの自室部分は、建物の区分所有に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)上、専有部分に当たります。
専有部分の復旧は、区分所有者が各自の負担でしなければなりません(区分所有法61条1項)。
よって、自室部分の復旧工事はあなたの負担ですることとなります。
A:ロビーやエレベーター等は、区分所有法上、共有部分に当たります。
同法では、マンションの損壊の程度を「小規模滅失」と「大規模滅失」に分けた上で、異なった取り扱いがなされております。
A:「小規模滅失」とは、建物の価格の2分の1以下が滅失した場合をいいます。
この場合は、規約で別段の定めがない限り、集会の普通決議、すなわち区分所有者の頭数と議決権(専有部分の床面積によって決まります)の過半数で決まります(同法61条3項)。
また、集会で復旧の決議がなされるまでは、各区分所有者が単独で復旧工事をすることもできます(同条1項)。
A:規約で別段の定めがない限り、各区分所有者が専有部分の床面積の割合に応じて負担することとなります。
A:「大規模滅失」とは、建物の価格の2分の1を超えて滅失した場合をいいます。
この場合は、区分所有者の頭数と議決権の4分の3以上の賛成がないと復旧工事ができません(同法61条5項)。
A:所有する区分所有権を賛成者に時価で買い取らせて、区分所有関係から離脱することが認められています(同条7項)。
A:被災前後の建物の価格の比較によって決まります。
もっとも、判定が困難なケースも多いと思います。
最終的には不動産鑑定士による鑑定が必要となる場合もでてくるでしょう。
被災建築物応急危険度判定制度
A:被災建築物応急危険度判定というものです。
市町村の災害対策本部が、専門家を派遣して被災した建物が地震後に余震などによって倒壊する危険性、タイルや外壁が落下する危険性等を判定して、二次災害を防止するための制度です。
応急的な判定ですので、外観を目視して行うのが一般的です。
A:判定の結果は3段階に分かれます。
結果に従って次のようなステッカーを玄関等の見やすい位置に貼ることになっています。
・ 調査済・・・・・・緑色のステッカー
・ 要注意・・・・・・黄色のステッカー
・ 危険・・・・・・・赤色のステッカー
仙台市では震災後、3月31日までに約7200件の判定を実施しており、そのうち約1000件が危険、約1900件が要注意と判定されたようです。
A:判定に強制力はありませんが、そのまま使用するのは危険です。
使用を中止して、一時避難所に避難するか、引き続き使用したい場合には、建築の専門家に早急に依頼して、どのような補修・補強をすれば使用できるのかを調査してもらうことが必要です。
A:「借家の滅失」というテーマでも触れましたが、建物が滅失したというためには、建物の損傷の程度、修繕に要する費用の両面から検討することが必要です。
今回ご相談の判定はあくまでも応急的に危険としたもので、その建物が滅失したと判断できるか否かは、もっと深く踏み込んだ調査が必要です。
まずは当事者間で良く話をした上で、建築の専門家に相談してみては如何でしょうか。
住宅の応急修理制度について
A:災害救助法23条8号に規定している「住宅の応急修理制度」を使えるかもしれません。
この制度は被災者が住み慣れた場所での暮らしを維持することを可能とすると同時に、限りある仮設住宅を有効に利用する目的で作られた制度で、自治体が応急修理の費用を負担してくれます。
A:災害救助法が適用された市町村において、次のような要件を満たせば制度使用ができます。
・災害により、住宅が半壊・半焼した場合(罹災証明書が必要です)
・仮設住宅に入居していない方
・自ら修理する資力のない世帯
A:基本的に世帯全体の年収と世帯主の年齢によって対象が決められます。
例えば世帯全体の年収が500万円以下であれば、問題なく該当しますが、700万円を超える場合には世帯主が60歳以上の場合に限られます。
A:この制度は日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理するもので、より緊急を要する箇所について実施します。
屋根・柱・床・外壁・基礎といった部分が最優先で、台所やトイレも対象になりますが、クロスのような内装は原則対象外です。
A:1世帯あたりの限度額が52万円となっています。まずはお住まいの市町村に応急修理の申込みを行い、その上で業者に見積相談します。
業者に発注するのは市町村であり、修理費は市町村から直接業者に支払われます。
A:制度の趣旨からして、応急的なものであることは必要ですが、例えば70万円の修理費を要する修理も全くできないわけではなく、その場合52万円を超える部分は申込者の負担となります。
がれき処理の問題
A:災害対策基本法64条に基づいて自治体が撤去することが認められています。
撤去の具体的な指針として、平成23年3月25日付環境大臣名で「東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針」が、関係各知事宛て通知されているところです。
A:一時的な立ち入りは所有者等に対する連絡・承諾を得なくても差し支えないとされています。
もっとも、可能な限りは事前に立ち入りを知りたいですよね。
ですから、作業の対象地域・日程等の計画を事前に周知することが望ましいですね。
避難所等で、事前の情報収集をされることをお勧めします。
A:建物が倒壊してがれき状態になっている場合には、所有者等対する連絡・承諾がなくても撤去して差し支えないものと考えられています。
緊急性があること、がれきに基本的には価値が無く、復興の支障になることから認められたものです。
A:前問と同様、撤去して差し支えないものとされています。
A:その場合は、所有者等の意向を確認するのが基本です。 もっとも、所有者等に連絡が取れない場合や、倒壊等の危険がある場合には、土地家屋調査士等の専門家に判断を求め、建物の価値がないと認められたものについては、解体・撤去して差し支えないものとされています。
A:おっしゃる通りですね。
現状では復旧が最優先との考えから、細かい判断は現場の専門家に委ねられていますが、慎重な判断がなされることが望まれるところです。
A:現段階では、指針はまだ定められていません。
早急に方針が定められることが望まれるところです。
A:是非見つかると良いですね。
貴金属その他の有価物及び倉庫等については、一時保管し、所有者等が判明する場合には所有者に連絡するよう努め、所有者等が引き渡しを求める場合は、引き渡すことになっています。
ネックレスは貴金属類に当たるので、発見された場合には保管されている可能性があります。
また、発見した自衛隊が保管し、住民に見られるようにしている場合もあるようです。
A:遺失物法により処理されることとなります。
A:まず、警察署長が提出を受けた物件の種類及び特徴や拾得の日時場所を3か月間公告します(遺失物法7条1項・4項)。
その間所有者が判明しない場合には、拾得者がその物の所有権を取得するか(民法240条)、
警察署の属する都道府県に所有権が帰属することとなります(遺失物法36条、37条1項)。
管轄の警察署に問い合わせをしてみるのも一つの手かと思われます。
A:こちらも是非見つかると良いですね。
位牌、アルバム等、所有者の個人にとって価値があると認められるものについては、
作業の過程で発見され、容易に回収することができる場合には、別途保管し、所有者等に引き渡す機会を設けることが望ましいとされています。
ブロック塀の倒壊
A:そのブロック塀は何時築造したものですか。
A:宮城県沖地震の後に倒壊したブロック塀についていくつかの裁判が出されました。
仙台地裁の平成4年4月8日判決は震度5程度の地震に対して安全性があるか否かを判断の基準にしました。
その後の建築基準法施行令もブロック塀の安全基準として震度5までは壊れないことを要求しています。
今回壊れた塀もこの基準は満たしていたことになりそうです。
A:賠償義務の根拠は民法717条の工作物責任です。
工作物の所有者は無過失でも責任を負うことになっていますが、「不可抗力」の場合には賠償責任を免れることになります。
従って上記裁判や建築基準法施行令によれば、震度6以上の震度によって倒壊した場合には「不可抗力」であるとして賠償責任を免れることになりそうです。
A:基本的には震度6強であれば、不可抗力として責任は無いと考えられます。
しかしながら、宮城県沖地震以来、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震のように震度6のものが何度か観測されていますので、「不可抗力」の評価についてもあらためて議論となる可能性は否定できないでしょう。
A:仮に、そのブロック塀が現在の安全基準を満たしていたとしても、震度6強では倒壊したことに変わりはないと判断される場合には、損害との因果関係がありませんので基本的には免責されることになります。
津波で放置された自動車
A:津波で流されたまま放置された自動車は復興活動の大きな妨げになっています。
各自治体では次々にこのような場合の取り扱いを広報しています。
災害対策基本法64条に基づいて、自動車の所有者に代わって、自治体が撤去し、一時保管するという内容になっています。
A:先ほどの災害対策基本法64条による撤去は公有地、私有地の別にかかわらず行えると定められています。
但し、災害復興の目的ですので、道路上が最優先になるという方針のようです。
道路・公園・水路等からの撤去が終了してから私有地に取りかかることになると思われます。
A:撤去した自動車は自治体で一時保管します。
そうした上で、ホームページ、市役所、避難所などに車両番号や保管場所を公示します。
公示後6ヶ月が経過しても引き取りがない場合には自治体が処分することになります。
A:自治体でも委託業者に依頼しておりますので、費用は自動車の所有者負担となります。
引き取りをする場合でも、使えなくなって廃車にする場合でも同様で、1万5000円程度のようです。
A:撤去は行政に特有の権限ですので、私人が勝手にはできないのが原則です。
しかしながら、復興にどうしても必要な措置であり、車も損傷が酷くて使い物にならないような場合には、道路に押し出すということもやむを得ないと思います。
境界の確定について
A:「境界」といっても公が決めているもの(公法上の境界)と私人間のもの(私法上の境界)があり、両者を区別することが必要です。
2つの中で、所有権の範囲を画しているのは私法上の境界になります。
A:私法上の境界は所有権の範囲を画すると言いましたが、所有権は原則として個人が自由に処分することができますので当事者間の合意によって境界を決めることができるのです。
従って隣地の方と立ち会って境界を確認することになります。隣地は複数あるでしょうから、全員が立ち会う必要が出てくると思われます。
阪神・淡路大震災の際にも街の人がみんな集まって確認を行ったようです。
A:法務局に保存されている公図、分筆図、地積図などが参考になります。
公道上の官民境界が残っていると復元する支点になります。
A:法務局では地図をかなりの範囲で電子化していますので、その場合には保存されています。電子化されていない場合には、町役場にある各種の地図が参考になります。
また国土地理院には航空写真が保存されており、パソコンで閲覧することも可能です。
A:今回のような大震災において、津波で街全体が消失してしまうという状況では、私人間の境界を決めるについても行政が積極的にイニシアティブをとって対応することが望まれます。
それによって現実的にも私人間の境界と公的な境界に乖離がなくなるのだと思います。
罹災証明書について
A:罹災証明書は火事や災害で家屋が被害を受けた場合に被害状況を自治体が具体的に確認した上で発行する書類です。
A:地震で損壊したり津波で流失した場合は市町村が発行者ですが、火災による焼失の場合は消防署長が発行することになります。
A:被災者生活再建支援法に基づく支援金、災害弔慰金法に基づく災害弔慰金・災害障害見舞金、税金の減免、公営住宅入居の優遇措置、住宅購入や事業資金のための融資、各種保険金の申請等に必要になります。
A:原本を示すことは求められることがありますが、各種申請に添付する場合にはコピーで足ります。原本は大切に保管して下さい。
罹災証明書(その2)
A:確かに、罹災証明を行うには、原則として現地調査が必要ですので、申請してもすぐに罹災証明書は交付されません。
そこで調査の前には届出証明書を発行しているのです。
A:罹災証明書は固定資産税課で担当されることが多いようですね。
それもあって固定資産税が賦課されていない建物については慎重な取り扱いがなされることがあると聞いています。
しかしながら、罹災証明書は建物が被災した際の各種支援を受ける場合の書類ですので、基本的に固定資産税の賦課とは直接リンクしないように思います。
資材置き場の壊れた写真や購入時の契約書等を持参して、市役所と十分に協議してみて下さい。
A:多くの建物が被害に遭いましたので、現地調査には時間がかかるかもしれません。
しかしながら危険な建物は早急に修繕しないわけにはいきません。
その場合には、修繕前に被害状況が判るような写真を沢山撮影しておくことが必要です。
また、修繕費用の明細書付の領収書も大切に保管しておいて下さい。
罹災証明書(その3)
A:全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4段階に分かれます。
このどの段階に該当するかによって支援金額が違ってきますので、証明書の判定は経済的にも大きな意味を持ちます。
A:今回の津波で壊滅的な被害を受けた市町村では、申請を受けてから調査をするのではなく、航空写真の分析等で罹災状況が把握できることから、地域内の建物を一括して「全壊」とする罹災証明書を発行することにしたようです。
もっとも各自治体によって様々な条件が違っていますので、必ず自治体に問い合わせして下さい。
A:家屋が流出したり、1階天井まで浸水した地域は全て「全壊」と判定することにしたようです。
A:被災者生活再建支援法によれば、生活再建費用と住宅安定費用を合わせて、「全壊」の場合最高300万円が支給されることになります。